特別受益について

2024/11/19

特別受益とは?

被相続人(亡くなった方)から、特定の相続人だけが大きな額の生前贈与等を受けていた場合には、「特別受益」の問題となります。

例えば、兄弟の中の一人だけが、父親からマンション購入費用として多額の生前贈与を受けている場合等が「特別受益」に当たります。

この場合には、その生前贈与額を遺産総額に組み入れて(これを「持戻し」と言います)、各相続人の相続分を計算し、最終的には、生前贈与を受けた相続人の相続分から、その額を引くという計算をします。

これは、その生前贈与が、遺産の前渡しと同視できるためです。

このように法律は、相続人間で不平等とならないために、「特別受益」という規定を設けています。

 

特別受益の計算

では、特別受益を持ち戻すとは、具体的にどのような計算をするのでしょうか。
実は、この計算を細かく解説すると難しいのですが、ここでは、単純化してお話いたします(遺産分割時と相続開始時の遺産評価は同一として解説します。)。

例えば、X(父)が亡くなり、相続人は、子であるA、B、Cの3名とします。

Xの遺産は6000万円であるところ、Xは生前に、Aにだけ、自宅建築資金として2000万円を贈与していました。

このAへの2000万円の生前贈与が特別受益に当たることを前提にすると、この2000万円は遺産額に持ち戻して、各相続人の相続額を計算していきます。

6000万+2000万=8000万円
8000万×3分の1=相続人1人の相続分 2666万円

◎ 今回の遺産分割における各人の取得額
・Aの取得額=666万円 ※2666万から既に贈与を受けている2000万を控除
・Bの取得額=2666万円
・Cの取得額=2666万円

なお、誤解を生じさせてしまうと困るので、あえて書きますが、遺産分割の内容は、相続人全員が合意するのであれば自由に決めることができますので、全員が納得するのであれば、もちろん、上記のように特別受益を考慮しない内容でも遺産分割協議をすることができます。

 

特別受益が問題となる事例

生前贈与等があれば、その全てが特別受益に当たるということではありません。
特別受益と認められるかは、正にケースバイケースになりますが、よく相談を受けたり、問題となるケースを挙げたいと思います(繰り返しですが、特別受益と認定されるかは、その額やその他の事情から個々の事案によって判断されます。)。

1 結婚時の持参金、支度金
多額であれば、特別受益と認定される傾向にあります。

2 学資(教育費)
親の相続について、例えば、子の内1人だけが、大学へ進学しているというケースの学資(入学金や授業料等)が特別受益に当たるかという問題があります。
この点、私立の医科・薬科等の学資のような特別に多額なものであれば、特別受益に当たり得るといえます。

3 相続人が受取人に指定されている生命保険金(死亡保険金)
受取人が指定された生命保険金は、原則としては、特別受益には当たらないとされていますが、その額等の事情によっては、例外的に特別受益になる場合もあり得ます。
詳細は、こちらのコラムをご覧ください(コラム:生命保険金(死亡保険金)と特別受益について)

4 親(被相続人)が子(相続人)の借金を肩代わり
被相続人たる親が、生前に子の借金を肩代わりで支払っていることがあります。
この場合に肩代わりした債務について、親が子に対して求償権を放棄したと認められる場合には、特別受益になり得ます。

5 長期間の生活費等の援助
被相続人たる親が、生前に、子の生活費等のために、長期間贈与を行っており、毎回の額はそこまで多額ではないものの、トータルの額が多額というケースがあります。
これは、正に個々の事情によりますが、親の扶養義務の履行の範囲内とされ、特別受益が認定されないケースもあります。
詳細は、こちらのコラムをご覧ください(コラム:相続Q&A【長期間に及ぶ子への援助が特別受益にあたるか】)

6 建物の無償使用の利益
例えば、被相続人たる親の名義の家に、子が無償で住んでいるケースがあり、その家賃相当額が特別受益に当たるのではないか、と争われるケースがあります。
実務上、このケースでの家賃相当額は、特別受益とは認められないと考えられています。

 

最後に

今回は、特別受益について解説をいたしました。

実務的な視点から申し上げると、多額の生前贈与があったとしても、相手方(受贈者)がそれを否定する場合には、裁判所の審理においては、特別受益を主張する側がそれを立証しなければなりません(相手方が争う場合には、証拠の提出が必要)。

私見としては、この立証の問題も相まって、裁判所の審理としては、特別受益の認定にシビアな判断が多くなされているという印象を持っています。

特別受益が争点になる等、遺産相続でトラブルが生じている場合には、是非、弁護士(当事務所)へご相談ください。きっと良い解決策が見つかるはずです。

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