相続Q&A【遺産分割調停時の不動産鑑定費用は誰が負担するのか】

2024/10/23

Q 質 問

現在、遺産分割調停を行っています。遺産の中の不動産の価値(価額)について、相続人間でどうしても合意ができないため、裁判所からは、裁判所選任の不動産鑑定士に不動産の実勢価額を鑑定してもらってはどうか、と勧められています。
裁判所からは、不動産鑑定にかかる費用が50万円程度かかると言われており、それを相続人の法定相続分割合で負担してはどうか、と言われていますが、これは私も負担しなければいけないのでしょうか。
不動産価値の合意ができないのは、主に、相手方が不合理な不動産価額を主張して譲らないためですので、私としては、相手方に全額を負担してもらいたいのですが、そのようにはならないのでしょうか。

 

A 回 答

色々なお考えもあると思いますが、筆者(弁護士 高橋)としては、裁判所が勧めるとおり、法定相続分割合で不動産鑑定費用を負担して、不動産鑑定を進めるべきと考えます。
 

解 説

遺産分割調停を進めるにあたり、遺産たる不動産の価値がいくらなのか争いになることがあります。
(弁護士コラム「遺産分割時の不動産の価値はどのように考えるか?(固定資産税評価額、路線価、実勢価額)」もご参照)

多くの場合は、相続人の各人が不動産業者作成の査定書を提出しあい、その中間額で合意する等、その不動産価値について相続人の合意を形成して、その合意した額を前提に審理を進めていきます。

しかし、事案によっては、どうしても不動産価値の合意ができないケースがあり、その場合には、裁判所選任の不動産鑑定士による実勢価額の不動産鑑定が行われることがあります。

この不動産鑑定の費用(主に不動産鑑定士の報酬)は、原則としては、法定相続分とおりに相続人が各人で負担することが多いと考えられます。
なお、この不動産鑑定費用は、「公共事業に係る不動産鑑定報酬基準」等の「基本鑑定報酬額」を参考に算出されているとのことで、不動産の規模、種類や地域、不動産の個数等によって変動があります。
鑑定費用は、筆者(弁護士高橋)の経験則上、数十万円~という感覚です。

ここで、この不動産鑑定費用を誰が、どう負担するのかで、話が進まないことがあります。

前述のとおり、裁判所からは、法定相続分とおりで負担してください、と指示されますが、これに異論が出ると話が進まなくなります。

この場合の一つの方策としては、遺産に預貯金がある場合には、当事者の合意の上で、その預貯金の一部を解約して、そこから鑑定費用を支出するという方法があります。

これもできない場合で、どうしても不動産鑑定を実施したい場合には、相続人の一人(又は鑑定費用の支出を拒否している者以外の相続人全員)が、鑑定費用の全額を支出して、不動産鑑定を実施してもらう、ということになります。

この場合に調停成立時に、一人が支出した不動産鑑定費用を清算するような内容がまとまればよいのですが、清算について特段の定めがされずに調停が成立した場合には、鑑定費用は、支出した者の負担になります。

次に、相続人の一部が不動産鑑定費用を支出した場合で調停が成立せずに、遺産分割審判がなされる場合には、審判内容として、鑑定費用の負担割合が定められます。

では、誰も鑑定費用を負担しない場合には、どうなるのでしょうか。
不動産鑑定費用は、鑑定実施前に相続人が納付しなければ、鑑定を実施することはできないため、費用の支払がないと鑑定は行われません(裁判所が立替払いしてくれるということもありません。)。

この場合、不動産鑑定を実施しなくても、遺産分割審判において裁判官が合理的な不動産価値を認定してくれるケースもあると思いますが、それもできない場合には、結果として、当該不動産を相続人が相続分割合の共有で取得するという共有分割等の審判が出る可能性がありますので、注意が必要です。

以上の解説のとおり、不動産鑑定費用を法定相続分割合とおりに負担することに異論があるケースもあるかと思いますが、あらたな紛争を防止する観点からは、可能な限り、裁判所の指示に則って、法定相続分割合とおりに負担することをお勧めします。

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