相続Q&A【遺産分割時の不在者財産管理人選任について】

2024/10/01

Q 質 問

私は、関東圏に住んでいますが、母方の亡祖父の実家は地方にあります。今般、母が亡くなりました。これは以前から問題になっていたことですが、亡祖父の実家が空き家になっており、名義も亡祖父のままになっています。
相続登記の義務化も始まったと聞きましたので、何とか、この亡祖父名義の不動産の問題も解決したいと考えています。
相続人は、私を含めて10名いますが、1人を除いて協力してくれそうです。その1人が大きな問題で、10数年前から行方不明になっています。
どうすればよいでしょうか。

 

A 回 答

行方不明の相続人について、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申立て、不在者財産管理人に遺産分割協議に参加してもらい、不動産名義を変更(相続登記)するという方法が考えられます。

解 説

いわゆる行方不明の者がいる場合に、その者に代わって財産管理等を行う者を不在者財産管理人といいます。
この制度の利用は、遺産分割を行う場合に限られるわけではありませんが、ご質問にあるように、遺産分割協議をしたいが相続人の中に行方不明の者がいる場合にも、多く利用されます。

依頼を受けた弁護士としては、まず、その行方不明者の住民票を辿り、最後の住所地とされる場所にお手紙を送ります。
これが、「宛所に尋ね当たらず」で返送されてきた場合には、次に近親者に、その行方不明者の住所等を尋ねます。
これも不明の場合には、実際に、住民票上の住所へ現地調査に赴き、その行方不明者が本当に現地に住んでいないのか/近隣の方で所在を知っている者がいないのかを調査します(実際に、近隣の何件かに聞いて回ります。このようなご時世なので、とても不審がられます。)。

それでも、行方不明者を発見できない場合に、上記の調査資料を添付して、家庭裁判所へ不在者財産管理人選任の申立てを行います。

このとき、申立人側で、不在者財産管理人の候補者を挙げなくてもよいのですが、可能な限り、候補者を明示して申立てを行います。
不在者財産管理人になるには、特別な資格は要求されず、遺産分割が目的の場合には、相続人ではない親族を候補者として申立てを行うこともあります。

また、当事務所では、弁護士とは別に司法書士も在籍していますので、その司法書士を候補者にたてることもあります(ケースバイケースですが、多くの場合、家庭裁判所は、候補者をそのまま不在者財産管理人に選任してくれています)。

選任の申立て後には、申立てを受けた家庭裁判所の独自の調査が行われ、それでも行方不明者を発見できないときは、不在者財産管理人が選任されます(家庭裁判所の調査が実際どのように行われているか分かりませんが、裁判所は警察署等の行政機関に照会をかけているようです。実際に経験した事例としては、刑事施設(いわゆる刑務所)から最近出所したことがわかり、現住所が判明したこともあります。)

不在者財産管理人が選任された後は、その不在者財産管理人を遺産分割協議に参加させて、遺産分割協議をまとめていきます。

なお、長期間、行方不明の方への対処方法としては、別に「失踪宣告制度」があります。
これは、行方不明者の生死不明な状態が続いた場合、その者が法律的に死亡したとみなす制度になります。
「不在者財産管理人制度」と「失踪宣告制度」の大きな違いは、失踪宣告については、死亡したとみなされるので、その者について相続が開始するということになります。
行方不明者について、ケースによっては、失踪宣告制度を利用することもあるかもしれませんが、失踪宣告制度は、その者が死亡したとされる制度ですので、慎重な利用が必要と考えています(当事務所では、遺産分割を進めるという目的の場合には、よほどの事情が無い限りは、不在者財産管理人選任の制度を選択しています。)。

◇ 横浜で相続問題・遺言問題に強い弁護士をお探しなら、当事務所へご相談ください!
  ご予約はTEL(045-594-8807)又はメール予約をご利用ください。

PAGE TOP