法定相続分で相続登記された後に遺産分割協議等がされた場合の更正登記(令和3年民法・不動産登記法改正シリーズ)
2024/06/06
はじめに
令和5年4月1日より、法定相続分で相続登記がされた後に遺産分割協議等が成立した場合の登記手続きが、共同申請による「所有権移転登記」ではなく、単独申請による「所有権更正登記」で申請可能となりました(令和5年3月28日付法務省民二第538号通達)。これは、相続にかかる登記手続をより簡略化していこうという施策の一環となりますが、実務的には大きな改正であるため、本コラムにおいてご紹介いたします。
改正前の問題点
これまで(令和5年4月1日より以前)、不動産の相続登記については、遺産分割協議がまとまっていない段階において法定相続分で相続登記を申請することは可能でした。しかし、この法定相続分での相続登記をしてしまうと、その後に、遺産分割協議等が成立して、相続分に変動があるケースにおいては、相続分が減少する相続人を義務者、相続分が増加する相続人を権利者とする「共同申請による所有権移転登記」が必要とされていました。
共同申請ですから、この登記をするには、登記申請書類へ、義務者となる相続人の実印+印鑑証明書等が必要となり、この協力が得られないと登記申請が滞る事態が生じていました。
また、移転登記となるため、登記にかかる登録免許税も、移転する不動産持分の価額×1000分の4の税率となっていました。
改正後(令和5年4月1日以降)
上記の問題点を解消するため、令和5年4月1日以降には、これが「単独申請による所有権更正登記」で登記申請することが可能となりました。権利者(相続分が増加した相続人)からの単独申請が可能となりましたので、義務者側の登記申請書類や実印の押印が不要となります(ただし、当然ながら、遺産分割協議が成立した協議書や印鑑証明書は必要)。
また、更正登記となりましたので、登記にかかる登録免許税が、不動産1個につき1,000円となりました。
最後に
不動産の相続に関する手続を日常的に行う弁護士・司法書士の実務にとっては、上記の改正は、大きな意義を有するものと考えています。従前は、法相続分で相続登記がなされている事案にあたると、遺産分割調停において、その後の移転登記申請ができるように、十分注意して調停条項等を組む必要がありましたが、今後は、そのような観点は不要となります。
また、法定相続分とおりに相続登記がなされており、その後に遺産分割協議が成立し書類も整っているのに、なぜか他の相続人が登記申請に協力してくれないために、登記ができなかったようなケースでも、今回の改正によって、登記申請が可能となります。
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