事業承継Q&A【無議決権株式を活用した事業承継スキーム例】

2023/09/27

質 問

当社(A株式会社)は、代表取締役・社長の私(80歳)が創業した建設会社です。会社の株式のほとんどは私が保有しています。

さすがに、私も高齢なので、ゆくゆくは、後継者候補者の孫(25歳)に会社を譲りたいと考えています。ただ、孫がまだ若いので、会社の重要な最終の決定(株主総会の議決)は、私ができるようにしておきたいと考えています。

また、当社の株式価値は、毎年上昇しており、今後も上昇することが見込まれます。自社株式の価値があまり上がらない現段階で、後継者候補者である孫に自社株式を移転したいと考えています。

何かよい方策はありませんか。

 

回 答

本件のように、現段階で、自社株式を会社後継者候補者へ譲渡したいが、現社長が、株主総会での決定権は保持したいというケースがあります。

そのような場合には、無議決権株式の種類株式を活用することが考えられます。

定款を変更し、議決権ありのA種類株式(普通株式)と、議決権を制限(議決権無し)とするB種類株式を発行する会社とします。

その後、例えば、議決権ありのA種類株式1株を現社長に残して、残りの無議決権株式であるB種類株式全てを、後継者候補者の孫へ譲渡(売買や贈与)します。

無議決権株式(種類株式)の具体的な定款記載例は、次のとおりです。

(発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容等)
第 〇条 当会社の発行可能種類株式総数は、次のとおりとする。
①     A種類株式    〇株
②     B種類株式    〇株
2 B種類株式を有する株主は、株主総会において決議すべき全ての議案について議決権を有しないものとする。
3 当会社が、会社法第322条第1項各号に掲げる行為をする場合においては、法令に別段の定めがある場合を除き、B種類株式の株主に損害を及ぼすおそれがあるときであっても、当該種類株主総会の決議を要しない。


※上記の記載例では、会社法第322条1項各号の場合の種類株主総会の決議を排除する定款規定を設ける例としています(会社法第322条2項)。

以上のとおり、種類株式(無議決権株式)を活用し、現時点で株式の大半を後継者候補者へ譲渡するが、株主総会の決定権限は、現社長が保持するということが可能になります。

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