相続が関連する土地の時効取得(土地登記簿に所有者の氏名のみが記載のケース)
2023/09/01
はじめに
当事務所は、相続事案を多く取り扱っており、また、登記の専門職である司法書士との共同事務所という特色があることから、「相続が関連する土地の時効取得」の事案を多く取り扱っています。◎解決事例「長年、所有者の所在が不明で悩んでいた土地を時効取得で名義移転した事例」
◎解決事例「登記簿に氏名の記載のみがある土地を時効取得で名義変更(登記)した事例」
この「相続が関連する土地の時効取得」の事案は、多くの場合、弁護士の専門領域である訴訟(裁判)と、司法書士の専門領域である不動産登記(土地の名義変更)が複雑に関係し、その両方の知識・経験が必要となります。
本コラムでは、当事務所で過去に解決した「相続が関連する土地の時効取得」の典型例(大昔の土地の登記簿に所有者の氏名のみが記載されているケース)の解決方法などをご紹介いたします(もう一つの典型例(過去に取得した土地について、何らかの理由で名義変更がされておらず、相続が生じてしまっているケース)はコチラをご覧ください)。
典型例(土地の登記簿に所有者の氏名のみが記載され、所在不明のケース)
この典型例は、大昔の土地の登記簿(表題部)に所有者の氏名のみが記載され、住所の記載もなく、所有者が所在不明のケースになります。このような場合には、その土地所有者について、可能な限り調査(近隣への聞き込みなど)はするのですが、大昔の登記簿に氏名だけ記載がある者ですので、通常は、とうの昔に亡くなっており、実際には、この者を発見するということはありません(稀に相続人を発見することはあります。)。
そこで、現在、この土地を20年以上使用している方(当事務所の依頼者)から、この登記簿上の所有者を被告として、時効取得を原因とした所有権移転登記請求訴訟(又は所有権確認訴訟)を提起することになります。
訴訟(裁判)での難しいポイント
ここで難しいポイントとしては、この登記簿上の所有者については、住所が全く分かりませんので、訴訟を起こしたときの裁判所からの訴状等の送達が困難という点があります(訴訟を提起した場合、まず、裁判所は、訴状を被告に送達(要は郵便で送る)しなければ訴訟がスタートしないのですが、これができないという問題)。ここでの対応策は、①公示送達という、裁判所に書類を掲示することで送達がされたものとみなされる方法、②その登記簿上の所有者について、不在者財産管理人の選任を申立てて、選任された不在者財産管理人を被告として、訴訟を進行していく方法、という二つの方法があります。
どちらの方法によらなければならないかは、そのケースにより裁判所の判断となりますが、②の不在者財産管理人の方法によりますと、不在者財産管理人の選任の申立てという手続きが必要となり、相当の費用もかかってしまう場合がありますので、できるだけ避けたいところです。
当事務所の経験としては、裁判所に対して「登記簿上の所有者は亡くなっていると考えられること、そして、時効取得が明らかであり、不在者財産管理人を選任しても管理する財産はない」という上申を行い、不在者財産管理人の選任ではなく、①の公示送達による方法で進めてもらったケースが複数あります。
まずは、この送達の問題をクリアし、その後、実体的に時効取得が認められれば、裁判所の判決を得ることができます(時間はかかりますが)。
名義変更の登記申請
この判決を取得した後に、この判決書を用いて、名義変更の不動産登記申請を行います。通常の弁護士事務所ですと、この登記申請は、別の司法書士事務所へ外注するのですが、当事務所は、弁護士と司法書士の共同事務所(代表弁護士が司法書士でもあります)ですので、登記申請(名義変更)まで、ワンストップでスムーズに行うことができます。
最後に
本コラムでは、「相続が関連する土地の時効取得」の典型例(土地の登記簿に所有者の氏名のみが記載され、所在不明のケース)の解決方法をご紹介しました。「相続が関連する土地の時効取得」の問題でお困りの際には、是非、当事務所へご相談ください。
もう一つの典型例(過去に取得した土地について、何らかの理由で名義変更がされておらず、相続が生じてしまっているケース)については、こちらをご覧ください。
なお、税金問題は、税理士へのご相談をお勧めいたしますが、土地の時効取得の場合には、一時所得として所得税の課税対象になることに注意が必要です(その他、不動産取得税や、登記申請時に登録免許税がかかります。)。
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