金銭等出資型の寄与分について
2023/07/26
相続において、亡くなった方(被相続人)の財産の維持又は増加に「特別の寄与」をした方がいる場合に、その方の「寄与分」(キヨブン)が認められるケースがあります。
この寄与分が認められるケースを類型化すると、
① 家業に特別に従事した場合(家業従事型)
(コラム「家業従事型の寄与分について」)
② 金銭等を亡くなった方へ出資した場合(金銭等出資型)
③ 亡くなった方の療養看護に特別に努めた場合(療養看護型)
(コラム「療養看護型の「寄与分」(キヨブン)の実例」)
④ 亡くなった方を長きにわたり特別に扶養した場合(扶養型)
などに分類されると言われています。
本ページでは、寄与分の類型の中の「金銭等出資型」について解説したいと思います。
この金銭等出資型の寄与分の具体例は、次のようなものです。
〇 相続人(例えば、子)が、被相続人(例えば、亡親)に対して、被相続人の自宅購入資金、リフォーム資金、借金の返済等のために、多額の金銭を贈与した。
〇 相続人が、被相続人に対し、自己所有の不動産を長年無償で使用させた。
このような金銭等出資型の寄与分の判断要素は、
(ⅰ)特別の貢献があるか、
(ⅱ)無償(に近い)か、
(ⅲ)財産の維持又は増加につながったか
などを考慮して「特別の寄与」といえるかを判断していきます。
(ⅰ)特別の貢献があるか
法律上、一定範囲の親族には扶養義務が課されていますので、それを超える特別な貢献が必要になります。お小遣い程度の金額は扶養の範囲内となります。
(ⅱ)無償(に近い)か
被相続人の持ち家に関する支出(例えばリフォーム代、住宅ローン)は、同居している場合に無償かどうかの問題が生じます。自分も居住の利益を得ていますので、無償ではないと判断されるか、認められても相当な裁量割合で減額されると見込まれます。
(ⅲ)財産の維持又は増加につながったか
例えば、相続人が所有しているマンションを被相続人に無償で貸して住まわせていた場合、被相続人は賃料の支出を免れることになりますので、財産の維持又は増加につながったといえます。
「被相続人」の財産への影響を判断するものですので、被相続人が代表者になっている会社への援助は、原則として被相続人への援助とはいえないとされています。例外的に、会社の実態は個人事業であって被相続人と経済的に極めて密接な関係があり、会社への援助が被相続人の資産の確保との間に明確な関連性があれば、認められる可能性があります。
会社への援助が寄与分に当たるか争われた高松高裁平成8年10月4日決定のケースを見てみましょう。
【事例】
父Aが経営するB社は、16年間、自転車操業状態であった。
その間、B社は、運転資金を金融機関からの借入、子Xからの資金提供によって調達していた。
AはB社から生活の糧を得ていた。
Aの個人資産の大半はB社の運転資金の借入のための担保に供されていた。
恒常的にAはB社に資金援助を行い、B社の資金を流用していた。
【裁判所の判断】
B社はAの個人企業に近い面もあり、またその経営基盤の主要な部分をAの個人資産に負っていたものであって、Aがその個人資産を失えばB社の経営は危機に陥り、他方B社が倒産すればAは生活の手段を失うばかりでなく、担保に供している個人資産も失うという関係にあり、B社とAとは経済的に極めて密着した関係にあったものであると判断しました。
そうすると、B社の経営状態、Aの資産状況、援助と態様等からみて、B社への援助とAの資産の確保との間に明確な関連性がある場合には、Aに対する寄与と認める余地があるとしました。
そして、B社は、売上が前年度と比較して10分の1となっていて経営危機にあった時に、Xから多額の資金提供を受けているから、会社の経営維持にとって重要なものであったとしました。
当時、Aが自力では多額の資金を準備できない経済状態であったから、Xが多額の資金をB社に提供して経営危機を乗り切ることができたのであり、その結果Aの個人資産が失われなかったと判断し、結論としてXの寄与分を認めました。
【考察】
この事案は、会社への資金援助が被相続人への援助に当たるケースとして参考になります。
まず、B社が破綻するとAも破綻するといった、いわば経済的な運命共同体にあるわけですから、「経済的に極めて密接した関係」にあるといえます。
次に、Xが資金援助をしたことによってB社は経営危機を乗り切ることができ、Aの個人資産が失われなかったのですから、「援助と資産の確保との間に明確な関連性がある場合」に当たり、Xの資金援助がAの資産の維持又は形成に寄与したといえます。
亡くなった方を、経済的に援助してきたので寄与分を主張したい、という方は是非一度ご相談ください。
◇ 横浜で相続問題・遺言問題に強い弁護士をお探しなら、当事務所へご相談ください!
ご予約はTEL(045-594-8807)又はメール予約をご利用ください。
寄与分が認められると、寄与分で認められた額が、その方の法定相続分にプラスされることになります。「遺産がその額になったのは私のおかげなのだから、私が貢献した分は上乗せしてください」という制度です。
この寄与分が認められるケースを類型化すると、
① 家業に特別に従事した場合(家業従事型)
(コラム「家業従事型の寄与分について」)
② 金銭等を亡くなった方へ出資した場合(金銭等出資型)
③ 亡くなった方の療養看護に特別に努めた場合(療養看護型)
(コラム「療養看護型の「寄与分」(キヨブン)の実例」)
④ 亡くなった方を長きにわたり特別に扶養した場合(扶養型)
などに分類されると言われています。
本ページでは、寄与分の類型の中の「金銭等出資型」について解説したいと思います。
この金銭等出資型の寄与分の具体例は、次のようなものです。
〇 相続人(例えば、子)が、被相続人(例えば、亡親)に対して、被相続人の自宅購入資金、リフォーム資金、借金の返済等のために、多額の金銭を贈与した。
〇 相続人が、被相続人に対し、自己所有の不動産を長年無償で使用させた。
このような金銭等出資型の寄与分の判断要素は、
(ⅰ)特別の貢献があるか、
(ⅱ)無償(に近い)か、
(ⅲ)財産の維持又は増加につながったか
などを考慮して「特別の寄与」といえるかを判断していきます。
(ⅰ)特別の貢献があるか
法律上、一定範囲の親族には扶養義務が課されていますので、それを超える特別な貢献が必要になります。お小遣い程度の金額は扶養の範囲内となります。
(ⅱ)無償(に近い)か
被相続人の持ち家に関する支出(例えばリフォーム代、住宅ローン)は、同居している場合に無償かどうかの問題が生じます。自分も居住の利益を得ていますので、無償ではないと判断されるか、認められても相当な裁量割合で減額されると見込まれます。
(ⅲ)財産の維持又は増加につながったか
例えば、相続人が所有しているマンションを被相続人に無償で貸して住まわせていた場合、被相続人は賃料の支出を免れることになりますので、財産の維持又は増加につながったといえます。
「被相続人」の財産への影響を判断するものですので、被相続人が代表者になっている会社への援助は、原則として被相続人への援助とはいえないとされています。例外的に、会社の実態は個人事業であって被相続人と経済的に極めて密接な関係があり、会社への援助が被相続人の資産の確保との間に明確な関連性があれば、認められる可能性があります。
会社への援助が寄与分に当たるか争われた高松高裁平成8年10月4日決定のケースを見てみましょう。
【事例】
父Aが経営するB社は、16年間、自転車操業状態であった。
その間、B社は、運転資金を金融機関からの借入、子Xからの資金提供によって調達していた。
AはB社から生活の糧を得ていた。
Aの個人資産の大半はB社の運転資金の借入のための担保に供されていた。
恒常的にAはB社に資金援助を行い、B社の資金を流用していた。
【裁判所の判断】
B社はAの個人企業に近い面もあり、またその経営基盤の主要な部分をAの個人資産に負っていたものであって、Aがその個人資産を失えばB社の経営は危機に陥り、他方B社が倒産すればAは生活の手段を失うばかりでなく、担保に供している個人資産も失うという関係にあり、B社とAとは経済的に極めて密着した関係にあったものであると判断しました。
そうすると、B社の経営状態、Aの資産状況、援助と態様等からみて、B社への援助とAの資産の確保との間に明確な関連性がある場合には、Aに対する寄与と認める余地があるとしました。
そして、B社は、売上が前年度と比較して10分の1となっていて経営危機にあった時に、Xから多額の資金提供を受けているから、会社の経営維持にとって重要なものであったとしました。
当時、Aが自力では多額の資金を準備できない経済状態であったから、Xが多額の資金をB社に提供して経営危機を乗り切ることができたのであり、その結果Aの個人資産が失われなかったと判断し、結論としてXの寄与分を認めました。
【考察】
この事案は、会社への資金援助が被相続人への援助に当たるケースとして参考になります。
まず、B社が破綻するとAも破綻するといった、いわば経済的な運命共同体にあるわけですから、「経済的に極めて密接した関係」にあるといえます。
次に、Xが資金援助をしたことによってB社は経営危機を乗り切ることができ、Aの個人資産が失われなかったのですから、「援助と資産の確保との間に明確な関連性がある場合」に当たり、Xの資金援助がAの資産の維持又は形成に寄与したといえます。
亡くなった方を、経済的に援助してきたので寄与分を主張したい、という方は是非一度ご相談ください。
◇ 横浜で相続問題・遺言問題に強い弁護士をお探しなら、当事務所へご相談ください!
ご予約はTEL(045-594-8807)又はメール予約をご利用ください。