遺言執行者による貸金庫の開披・解約手続きについて

2023/06/08


相続時に、銀行等に貸金庫が残っている場合、その開披や解約手続きについての一般的な問題点は、コラム「相続後の貸金庫の開披・解約手続きについて」で述べていますが、遺言書があり、かつ、その遺言書に遺言執行者が指定されていた場合は、どうでしょうか。

なお、本コラムは、弁護士髙橋の経験等に基づく私見であり、各銀行等それぞれの対応も違うものと考えますので、実際の貸金庫の開披・解約手続きについては、必ず各銀行等へお問い合わせください。

 

遺言書に貸金庫の開披等の権限を盛り込むべき

遺言書に遺言執行者の指定があり、相続後に、その遺言執行者が銀行等の貸金庫を開披・解約することができるか、という点について、まず、当事務所では、ご依頼を受けて遺言書原案を作成するときには、必ず、この貸金庫開披・解約権限を明確に、遺言書内に記載するようにしています(次のような文例)。

(文例)
遺言者は、遺言執行者として〇〇〇〇を指定する。
遺言執行者には、預貯金・有価証券等相続財産の名義書換え、解約及び払戻し並びに貸金庫の開披、解約及び内容物の受け取り、その他本遺言の執行に必要な一切の権限を授与する。


以上のような文言が遺言書に記載されていれば、遺言執行者は問題なく、被相続人の貸金庫の開披・解約・内容物の受取りをすることができます。

 

遺言執行者の権限が記載されていない場合

では、遺言書において遺言執行者は指定されているが、貸金庫の開披等の権限については何も触れられていない場合には、どうでしょうか。

遺言執行者は、民法1012条で「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と規定されているものの、民法1014条では、「遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ」遺言執行者の権限が及ぶ、とされています。

被相続人の残した銀行等の貸金庫については、その内容物が分からず、遺言で財産分けの対象とされた特定の財産がその貸金庫内にあるのか、無いのかがわからないため、銀行等が遺言執行者による貸金庫の開披等に難色を示す場合があるのです。

ここで、注目すべき最高裁判例として平成11年11月29日判決があります。
この判決は、貸金庫契約者の貸金庫内の内容物の引渡し請求権の性質等に触れたものですが、同判決や、この判例解釈を行っている文献を見ると、私(弁護士髙橋)の見解としては、遺言執行者は、遺言書に貸金庫の開披等の権限が記載されていない場合で、かつ、遺言内容が特定物に関する内容だとしても、単独で貸金庫の開披等の手続きをすることができると考えています。

前記最高裁判決では、貸金庫契約者の銀行等に対する権利は、「貸金庫の内容物全体を一括して引渡すことを請求する権利」と捉えています。
ここから考えると、遺言執行者についても、その権限は、収納品の有無や内容にかかわらず貸金庫の内容物全体に及び、遺言内容を問わず、遺言執行者の権限と捉えるべきと考えられます。

以上のとおり、私見を述べましたが、実際の遺言執行者による貸金庫の開披・解約・内容物の受取りは、遺言の内容や各銀行等によっても対応がかなり変わってくるものと思います。

相続後に貸金庫が開けられない、という相談も多くあるため、コラム「相続後の貸金庫の開披・解約手続きについて」でも述べましたが、弁護士の視点からすれば、相続開始後に相続人間で紛争が起こりそうなのであれば、貸金庫契約は、被相続人が生前に解約する等しておいた方がよいように思います。

貸金庫問題を含めて、相続手続きでお困りの際には、是非、ご相談ください。


◇ 横浜で相続問題・遺言問題に強い弁護士をお探しなら、当事務所へご相談ください!
  ご予約はTEL(045-594-8807)又はメール予約をご利用ください。


 

PAGE TOP