相続Q&A【建物使用目的の土地使用貸借の借主が亡くなった場合の返還義務】

2023/05/29

質 問

私は、母とずっと同居をしていましたが、先日、母が亡くなりました。
母は、叔父(母の兄)から土地を無償で借りて、建物を建てて住んでいましたが(私と同居)、母が亡くなったことで、現在は、私が一人で暮らしています。
母が亡くなった後に、叔父から、「土地を返してくれ」と求められましたが、これには応じないといけないのでしょうか。

 

回 答

あなたが、使用貸借権原を承継している場合がありますので、請求とおりに土地を返還しなくてもよいケースがあります。
 

解 説

家族などの親しい間柄の人が建物を建築する際に、土地を無償で貸していることがあります。
他人に無償で使わせることを、民法では「使用貸借」と言います。

使用貸借は、無償で使わせるという内容ですので、血縁者や内縁といったとても親しい間柄で行われることが多く、貸した人と借りた人との人的関係が重要な要素とされています。

民法597条3項では、借りた人が死亡した場合には使用貸借が終了するとされています。これは、借りた人との人的関係がなくなったので、使用貸借を維持する必要がなくなったと考えられるからです。

しかし、土地を借りて土地上に建物を建築して居住するという使用貸借の場合は、話が異なります。
例えば、妹の夫に、建物所有の目的で土地を使用貸借し、妹の夫婦が居住していたところ、妹の夫が亡くなったという事案において、その目的は借りた人のみならずその家族の居住にあるから、現行民法597条3項は適用されないと判断した裁判例があります。

建物を所有し、そこで生活することを使用貸借の目的としていた場合、借りた人との人的関係以上に、その目的が重視される傾向があります。使用貸借の目的が、土地上の建物を生活の本拠とするためである場合、借りた人が亡くなった後も、相当期間の使用貸借が認められることがありえます。

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