相続Q&A【長期間に及ぶ子への援助が特別受益にあたるか】
2023/05/22
質 問
父が亡くなり、相続人は、子3名です。父は、そのうちの子1名に対してだけ、毎月5万円~20万円の贈与(送金)を数十年にわたり行ってきました。この援助は、特別受益に当たらないのでしょうか。なお、その他の2名は、そのような援助を受けていません。回 答
ケースバイケースですが、事情によっては、特別受益にあたります。解 説
生前、親である被相続人から、特定の子(相続人)に対して、継続的に援助がされることは少なくありません。1回の金額は少額でも、長期間に及べば、総額が大きな金額になるため、特別受益なのではないかとしばしば争いになります。
特別受益というのは「相続の前渡し」のことですが、特定の子だけ援助しているのは「相続の前渡し」に当たりそうです。他方で、親は子への扶養義務がありますので、子への扶養義務を果たしているようにも見えます。
現在の裁判所の実務では、被相続人の扶養能力、子の要扶養状態から、「この金額までが扶養の範囲である」というラインを導いています。
被相続人の扶養能力というのは、資力、社会的地位、生活状況などです。
子の要扶養状態というのは、身体的・精神的な事情で働くことができない、といった援助を必要とする事情です。
こういう親であれば、こういう子に対して、このくらい援助しても当然だ、というラインを裁判所が考えているといえるでしょう。
過去の裁判例では、遺産総額や親の収入状況から、1か月に10万円までの援助は扶養の範囲であり、それを超える援助は「全額」が特別受益に当たる、と判断されたものがあります(東京家審平成21年1月30日)。
この裁判例は、1か月10万円を超える援助があった場合には、10万円を超える額ではなく、援助額全額を特別受益として認める考え方をしています。
例えば、月15万円の援助がされた場合には、10万円を超える5万円を特別受益と判断するのではなく、15万円全額を特別受益として認定する、という考え方になります。
上記の考え方には、異なる考え方もあり、上記の例でしたら、10万円を超える5万円部分のみ(15万-10万円=5万円)を特別受益として捉えるべきという考え方もあります。
いずれにしても、子への継続的な援助が特別受益にあたるか否かは、当該事例によって判断されるべきものと考えています。
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